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なめこ(後編)

2023-07-31 Mon 01:30

 

ぐるぐるとドンキの日用品コーナーを回ってみたが、ガラスを割る道具などなかった。

 

 

当然といえば当然だ。そんな簡単に手に入ったら泥棒に武器を提供しているようなものだ。

 

 

歩き回っているうちに冷静になってきた。仮にハンマーを手に入れたとしても、強引に割って無傷でいられるだろうか?家の中にも破片が飛び散るだろうし、修理してもらうまで身動き取れないのも面倒だ。

 

 

こうなったらベランダで寝るか、ホテルに泊まるかだ。家の中にはテントと寝袋だってあるのに、カギが開かないから取れやしない。今度はアウトドア用品のコーナーに回る。家にあるのに、と思うと腹立たしい。しかもこの季節、朝4時には日が登る。気温が上がる中、近所の店が開くまで屋外で待機していなければならない。地獄だ。

 

 

こうなったらホテルだ。だがすでに23時30分。週末のホテルは高い。近辺ではその中でも高いところしか残っていない。そういえば外資系ホテルの無料宿泊券があった。こんな時に使うのは悔しいが、今はまさに必要な時だ。

 

 

とりあえず寝る場所が決まったので、ご飯を食べることにした。牛乳となめこを持って牛丼屋に行った。

 

 

さっさと食べてホテルに移動、と思ったら、予約画面に「本日の宿泊ではクーポンはお使いになれません」の文字。現金だと5万円だ。カギが交換できるじゃないか。

 

 

やばい、泊まる場所がない。電車もなくなる。急いで探したら六本木のアパホテルが出てきた。場所の割には安かったのですぐに予約した。

 

 

ここでまたしてもやられる。終電が2分前に出ていたのだ。仕方なくUberを呼ぶ。どうも後手後手になってツイてない。

 

 

30分後、無事にチェックインし、僕は露天の陶器風呂に浸かっていた。「まいったね」と滅多に言わない独り言をつぶやいた。

 

 

六本木の街に繰り出す気力もなく、部屋で牛乳を飲んだ。なめこは冷蔵庫に入れといた。さぞかし疲れたからぐっすり眠れるかと思ったら、興奮したせいか明け方まで眠れなかった。

 

 

そして朝、目が覚めたらチェックアウトの時間を過ぎていた。とことんツイてない。1時間延長して家の管理会社に電話した。ところが電話に出たオペレーターが役立たずで、とんちんかんなことばかり言ってくる。

 

 

「家のカギを開けるだけなら管理費の範囲で無償です。ただ私共が手配するカギ屋は開けるだけです。修理等は承れません。今から手配いたしますか?」

 

 

これを聞いて誰が「ぜひお願いします!」と頼むというのか。壊して家のカギだけ開けて、「じゃあ修理は他の業者にお願いします」なんて有り難くもなんともない。このオペレーターが間に入るとひどいことになりそうだったので、カギ屋と直接話をさせてもらうことにした。

 

 

家に戻って1時間後、カギ屋がやってきた。それはもうすごい手さばきで、壊すことなく数十秒で開けてしまった。昨夜のカギサービスの人の無駄なアドバイスはなんだったのか。

 

 

スマートロックはやはり粘着が弱って下に落ちていた。すべてはこの粘着テープだ。

 

 

さて、落ち着いてプロテインを飲もうかと思ったら、牛乳がない。ホテルに捨ててきたので買い直しだ。

 

 

そういえばなめこは、、、冷蔵庫に忘れてきた。

 

 

 

 

なめこ(前編)

2023-07-24 Mon 01:59

 

ジムの帰りにスーパーでなめこと牛乳を買った。急になめこ汁が飲みたくなったのと、プロテイン用の牛乳だ。

 

 

いつものごとく、玄関の数メートル先から部屋のスマートロックを解除しようとしたら、反応がない。たまにBluetoothが外れるのでそのせいかと思ったが、スマホのロックは確かに解錠されている。ジワジワと嫌な想像が浮かんできた。

 

 

数日前からスマートロックがグラついていた。そろそろ粘着テープを取り替えないといけないと思いつつ、もう少し持つだろうと考えていた。外れたとしたらかなりマズい。鍵は部屋の中だ。

 

 

ドアノブに耳を近づけてスマホを操作してみた。微かに音がするが、ノブの近くではなさそうだった。時刻は22時。対処方法も限られてくる。

 

 

管理会社の鍵サービスに連絡するも、ピッキングで開けられない鍵でおそらく交換になるとのこと。しかも小一時間ほど音が出る作業で、今の時間は対応できないと。高額になるし時間がかかるので、窓ガラスを割った方がいいかもしれないとまで言われた。

 

 

あの粘着テープのせいで部屋に入れない。ガラス屋は開いてないし、自分で割ろうにも、手元にはジムウェアと牛乳となめこしかない。

 

 

いろんな可能性を考えた。とにかく考えた。

1.音が出ようが強引にカギ屋に開けさせる。

2.ドンキでガラスを割る武器を買ってくる。

3.知り合いに助けを頼む。

4.ベランダに回り込んでそこで夜を明かす。

5.ホテルに泊まって明日カギ屋かガラス屋を呼ぶ。

 

 

1は近所にも業者にも迷惑だ。2はそんなものが売っているか分からないが試す価値はある。3は近所に住んでいて、この問題を解決できる人が思いつかない。4は朝の日差しで干からびそうだ。5はとにかく金がかかりそうだ。

 

 

この時点で僕の中では2か4か5になった。まずは2だ。急がないと5の選択肢もなくなり、4で干からびることになる。

 

 

僕は落ち着かない気持ちのまま、邪魔な牛乳となめこを持ってドンキに向かった。

 

(後編へつづく)

 

 

 

 

Daisy

2022-11-22 Tue 03:35

 

時間の流れは一定のはずなのに、ある時急に早くなり、過ぎ去るとまた元の流れに戻る。

 

 

エキサイティングな時の密度は濃く、喜怒哀楽がぎっしり詰め込まれて、強い思いを残す。

 

 

だがそうした時間でさえ、時が経つにつれて会話や細かい感情の揺れは集約され、ある一瞬の思いだけが強く残り、古いものはただぼんやりとした塊のようになって霞んでいき、ズブズブと奥深くに沈み込んでいく。

 

 

何だったんだろうなと思う。いくつになっても説明はできないが、ひたすら何だったんだろうな、とぼーっとする。

 

 

ぼんやりとした塊になって自分の内側に入っていった時に消化されるのか、それともただ忘れていっているだけなのか。

 

 

どちらにしても、僕にとってはすごく早い時間と遅い時間があって、早い時間の出来事はものすごく感情を揺さぶられる。

 

 

 

 

Gesu

2022-09-11 Sun 01:57

 

すごい好き

 

 

 

 

Ivy Lab vol.2

2022-07-25 Mon 10:29

 

大好きなのに曲名が分からないことほどストレスが溜まるものはない。

 

 

長いセットだが、頻繁にBGMで流しながら聞いている。そしていつも同じところで手が止まる。

 

 

17:35からの曲がぶっちぎりで好きで、wonky hip hopの真髄とも言える曲だと思うんだが、コメントを見る限りリリースされていないようだ。なんとも心憎いというか、前向きに検討してもらいたい。

 

 

崩れかけの盆踊りのようなフレーズから始まり、ハイファイなシンセフレーズが重なる。途中のフランジャーがズブズブと曲の中に引きずり込む。ボーカルエフェクトの気だるさは憂鬱でありながら安心感を与えてくれる。このわずか2分あまりがとても愛おしい。